LE MANS HYPERCARAF CORSE#83FIA WEC
THE RACE LASTS 24 HOURS.
GETTING THERE TAKES YEARS.
レースは24時間。そこにたどり着くまでには、何年もかかる。
ROBERT KUBICA 1995—
31年
YE YIFEI 2010—
16年
PHIL HANSON 2013—
13年
LE MANS 24H
24時間
横棒は、#83に乗る3人がレースを始めてから2026年までの年数。いちばん下の24時間は、同じ物差しでは線の太さに届かない。
耐久レースで勝つために作られた車
Ferrari 499P は、ル・マン・ハイパーカー規定に合わせて作られた FIA世界耐久選手権(WEC)の競技車両です。公の場に初めて出たのは2022年7月6日のシェイクダウンで、競技デビューは2023年[1][3]。
#83 は AF Corse がエントリーする車両です。Ferrari の公式車両は #50 と #51 で、#83 はそれとは別の体制で走っています。2025年のル・マン24時間では、この #83 が Robert Kubica、Ye Yifei、Phil Hanson の3人で総合優勝しました(387周、2位と14.084秒差)。2026年も同じ3人が #83 に乗っています[4][5][6]。
「499P Modificata」は別の車。2023年10月28日にムジェロで発表された、競技には出ないサーキット走行専用の限定車で、Ferrari の Sport Prototipi Clienti で走る[3]。#83 は WEC を走っている競技車両の 499P。
ONE CAR.
THREE DRIVERS.
1台を24時間、3人で乗り継ぐ。
-
ROBERT KUBICA
RACING SINCE
1995[12]
10歳でカートを始めたとされる。四輪に転向したのは2001年で、それまでにカートのタイトルを6つ獲っている。
-
YE YIFEI
RACING SINCE
2010[11]
10歳でカートを開始。2年のうちに中国選手権を連覇している。2000年6月16日生まれ。
-
PHIL HANSON
RACING SINCE
2013[8]
本人の公式サイトの年表に「2013 First Karting Race」。2015年に英国 Super One のジュニアX30王者。四輪は2016年から。
31 + 16 + 13YEARS OF RACING HISTORY
それぞれのキャリアの経過年数を足したもの。#83 に投入された時間ではない。
「RACING SINCE」はカートを始めた年から数えている。確度は3人で同じではない。ハンソンは本人の公式サイトの年表、イェは報道、クビサは年を明記した競技団体の資料が無く、10歳で始めたという記述から広く1995年とされているもの。
24 HOURS ON TRACK.
DECADES BEFORE IT.
短いものから順に置く。単位も意味も違う。
-
THE RACE
24 HOURS
ル・マン24時間。[7]
-
ONE DRIVER
4 HOURS / 6H
1人のドライバーが運転できるのは、どの6時間を切り取っても最大4時間まで。運転時間にピットストップと赤旗中断は含みません。[7]
-
PRE-EVENT
8 DAYS
およそ8日前、マラネロで Pre-Event 会議。[1]
-
BEFORE THE RACE
20 DAYS
最初の会議「Build」が始まるのが、およそ20日前。空力の構成、ブレーキ、ソフトウェアと配線の仕様を決める。[1]
-
THE CAR ITSELF
4 YEARS
シェイクダウンが2022年7月6日。競技デビューは2023年。[1]
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PHIL HANSON
13 YEARS
2013年、最初のカートレース。[8]
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YE YIFEI
16 YEARS
2010年、10歳でカートを開始。[11]
-
ROBERT KUBICA
31 YEARS
10歳でカートを始めたとされる年から数えて。四輪転向は2001年。[12]
ここに並べたものは単位も性質も違う。棒の長さで比較できないので、層として置いている。
THE RACE LASTS 24 HOURS.GETTING THERE TAKES YEARS.
THE DRIVER IS VISIBLE.
MOST OF THE SYSTEM ISN'T.
ヘルメットを被って映るのは3人。動いているのは、その3人だけではない。
- ENGINEER仕様を決める
- MECHANIC組む・直す
- STRATEGY24時間の組み立て
- DATA走行データの解析
- SOFTWARE制御と設定
- TYRES摩耗と選択
- ENERGYスティントごとの配分
- FACTORY分解・検査・再組立
- LOGISTICS車両と部品の移動
- SIMULATORコースごとの最適化
- レースの何日前から
- 20日少人数で、その一戦に向けた車の仕様を決める。[1]
- Pre-Event 会議
- 8日前 / 約40名マラネロに集まる。約40名は Ferrari の公式車両 #50・#51 を担当するエンジニアの人数。[1]
- メカニック
- 約40名AF Corse の本拠地で、車両準備の各工程を担当する。[2]
- 1台の部品点数
- 3,000点超エンジンと電気モーターの内部部品を除いた数。[2]
- ル・マン前の交換
- 最大70%短いレースの後は同じ部品で組み直すことも多い。ル・マンの前は最大70%を交換。[2]
- 設計上の走行距離
- 9,000km同じ部品のまま走れるように作られている距離。ル・マン24時間の走行距離を上回る。[2]
ここに出した人数は、いずれも Ferrari が公式車両(#50・#51)と Ferrari – AF Corse の体制について説明しているもの。#83 に何人が関わっているかは公表されていない。
BEFORE THE RACE STARTS,THE WORK HAS ALREADY STARTED.
YUSAKU MAEZAWA
前澤友作氏が「フェラーリ499P 83号車のオーナーになることになりました」と自身のアカウントで公表したのは、2026年6月13日、ル・マン24時間のスタート90分前[14]。
-
2023年5月
MAEZAWA RACING の発足を発表[16]
-
2024年5月
フェラーリ・チャレンジ・ジャパン第2戦(富士)でドライバーデビュー。レース2でクラス優勝[17]
-
2025年9月
鈴鹿1000km(インターコンチネンタルGTチャレンジ)に参戦[18]
-
2026年6月13日
#83 の車両オーナーになると公表[14]
WHEN EACH CLOCK STARTED
-
1995—
ROBERT KUBICA[12]
RACING
-
2010—
YE YIFEI[11]
RACING
-
2013—
PHIL HANSON[8]
RACING
-
2022—
FERRARI 499P[1]
SHAKEDOWN
-
2023—
MAEZAWA RACING[16]
TEAM
-
2024—
YUSAKU MAEZAWA[17]
RACING DRIVER
-
2026—
YUSAKU MAEZAWA[14]
OWNER OF #83
始まった時点だけを並べている。長さや量を比べる図ではない。
公表されているのは「車両オーナーになる」ということだけ。どのシャシーか、金額、売り手、契約の内容は公表されていない。本人の言葉も「昨年の優勝チームでもあるフェラーリ499P 83号車」であり、2025年の優勝車両と物理的に同じシャシーだとは述べていない。FIA WEC のエントリー上、#83 のエントラントは AF Corse のまま。
ONE NUMBER.MANY CLOCKS.
番号はひとつ。時計はいくつもある。
いちばん速い1周では、勝てない
24時間のあいだに、条件は何度も変わる。
- DAY昼
- NIGHT夜
- RAIN雨
- TRAFFIC速さの違う車と混走
- PITピット作業
- DRIVER CHANGE乗り継ぎ
- TYRES摩耗の管理
- ENERGYエネルギーの配分
- RELIABILITY壊れないこと
規則の側から見ると、この24時間は「1人では走れないようにできている」レースです。ドライバーは最大3人まで、リザーブは認められません。1人が運転できるのは、どの6時間を切り取っても最大4時間まで。登録したドライバーが1度も走らなかった場合、その車は失格になります(不可抗力と認められた場合を除く)。つまり、一人のドライバーだけで24時間を完結させることはできません。
運転時間の規定は、2026年ル・マン24時間の付則規則 第13条による<a class="fr-ref" href="#s7">[7]</a>。よく紹介される「合計14時間まで」の上限は LMP2 と LMGT3 のブロンズ/シルバー向けで、規則には「この運転時間の表はハイパーカー・カテゴリーには適用されない」と明記されている。ハイパーカーに掛かるのは6時間中4時間までの方だけ。
THE CLOCK SAYS 24 HOURS.THE CAR CARRIES YEARS.
まとめ
HOW MUCH TIME
IS INSIDE ONE RACE CAR?
一台のレーシングカーの中に、どれだけの時間が入っているのか。
出典
- [1] Ferrari 499P: the team's preparation before a race
Ferrari(公式)2024年4月30日
「Build」がレースの約20日前に始まること、Pre-Event 会議が8日前にマラネロで開かれ、公式車両 #50・#51 を担当する約40名のエンジニアが参加すること。499P のシェイクダウンが2022年7月6日であること。Giuliano Salvi(Ferrari Endurance Race Cars Race & Test Operation Manager)の説明。
- [2] Ferrari 499P, the Hypercar's pre-race preparation
Ferrari(公式)2024年4月9日
AF Corse 本拠地の約40名のメカニック、1台あたり3,000点超の部品、同じ部品で9,000kmを走れる設計、ル・マン前に最大70%の部品を交換すること。Batti Pregliasco(Team Manager)と Luca Massé(AF Corse Technical Manager)の説明。
- [3] Ferrari 499P and 499P Modificata: what sets them apart
Ferrari(公式)2024年12月19日
競技車両の 499P と、非競技・サーキット走行専用の 499P Modificata の違い。Modificata は2023年10月28日にムジェロで発表され、Sport Prototipi Clienti で走る。
- [4] FIA WEC — Car #83 (2026)
FIA World Endurance Championship(公式)
2026年の #83 のエントラントが AF Corse であること、車両が Ferrari 499P であること、ドライバーが Ye Yifei / Robert Kubica / Phil Hanson であること。
- [5] 24 Hours of Le Mans 2025 — Race summary
FIA World Endurance Championship(公式)
2025年ル・マン24時間の総合優勝が #83 AF Corse Ferrari 499P(Kubica / Hanson / Ye)、387周であること。
- [6] AF Corse team take Ferrari into the history books at Le Mans
ACO / 24 Hours of Le Mans(公式)2025年
主催者側による2025年の優勝発表。#83 と3人のドライバー名。
- [7] 2026 24 Hours of Le Mans — Supplementary Regulations(第13条 Categorisation, crews and driving time)
ACO(公式PDF)
「どの6時間の中でも1人あたり最大4時間」、ドライバーは最大3人でリザーブ不可、1度も走らなかったドライバーがいる場合は失格、運転時間にピットストップと赤旗中断を含まないこと。最小・最大運転時間の表がハイパーカーには適用されないことも同条に明記されている。
- [8] Phil Hanson — Profile
philhansonracing.com(本人公式)
年表に「2013 First Karting Race」「2015 Super One British Karting Championship – Junior X30 Champion」。生年月日1999年7月5日。
- [9] Phil Hanson — Driver profile
Ferrari(公式)
1999年7月5日ロンドン生まれ。2015年に Super One ジュニアX30王者、2016年から LMP3 で四輪レースを開始。2026年から Ferrari の公式ドライバー。
- [10] FIA WEC — Ye Yifei
FIA World Endurance Championship(公式)
生年月日2000年6月16日。
- [11] Chinese driver Ye Yifei wins Le Mans 24 Hours
China Daily 2025年6月17日
「began in karting back in 2010, when he was just 10 years old」。2年で中国カート選手権を連覇したこと。
- [12] Event programme: Robert Kubica, the consummate all-rounder
European Le Mans Series(ACO系・公式)
カートで6つのタイトルを獲ってから2001年に四輪へ転向したこと。カート開始の年は記載されていない。
- [13] FIA WEC — Robert Kubica
FIA World Endurance Championship(公式)
生年月日1984年12月7日、ポーランド、プラチナ。
- [14] 前澤友作氏の投稿(2026年6月13日 21:31)
X / @yousuck2020(本人アカウント)
「すでに発表された通り、昨年の優勝チームでもあるフェラーリ499P 83号車のオーナーになることになりました」。ル・マン24時間のスタート90分前、グリッド上からの投稿。
- [15] 夢のル・マン挑戦へ第一歩。前澤友作がWECに参戦するフェラーリ499Pの83号車オーナーへ
autosport web 2026年6月13日
MAEZAWA RACING が AF Corse の #83 フェラーリ499P の車両オーナーになるとの報道。
- [16] 前澤友作がレーシングチーム『MAEZAWA RACING』を始動
autosport web 2023年5月18日
チーム発足の発表。ファナテックGTワールドチャレンジ・アジアへの参戦。
- [17] 前澤友作、フェラーリ・チャレンジ・ジャパンでレーシングドライバーとしてデビュー
autosport web 2024年5月
2024年5月10〜12日、富士スピードウェイでの第2戦、コッパ・シェル・アマチュアクラスでのデビュー。レース2でクラス優勝。
- [18] 前澤友作、鈴鹿1000kmに参戦
autosport web 2025年
2025年9月、インターコンチネンタルGTチャレンジ第4戦・鈴鹿1000kmへの参戦。
確認できなかったので、書かなかったこと
- どのシャシーなのか。本人の言葉は「昨年の優勝チームでもあるフェラーリ499P 83号車」で、2025年の優勝車両と同一のシャシーだとは述べていない。レース番号とシャシーの同一性は別の話。
- 金額、売り手、契約の内容、期間。いずれも公表されていない。
- Ferrari または AF Corse 側からの公表。両社の公式サイトと FIA WEC のエントリー情報には見当たらない。
- #83 に何人のエンジニア・メカニックが関わっているか。Ferrari が示している人数は公式車両 #50・#51 と Ferrari – AF Corse の体制についてのもの。
- クビサとイェがカートを始めた年の一次資料。競技団体の資料には年の記載が無く、年齢の記述と報道による。
- 前澤氏がどれだけテストや走り込みをしたか。公表された走行記録の外は推測しない。